北海道・東北に残る伝統的な結婚式

公開日:2016年05月11日 カテゴリー:ハウツー タグ:

日本各地に残る伝統的な結婚式 ~北海道・東北~

今まで沖縄の結婚式場でウェディングプランナーとして、多くの披露宴を見てきました。 逆に言うと日本各地の披露宴は今まで参列したことがなく、全国共通の結婚式との違いを感じていただけでした。ということで今回から日本各地方の披露宴の特徴を調べてみようと思います。

結婚式のまえの大事な慣習 東北地方

東北地方の風習として「仏壇参り」があります。いわゆる「結納返し」のこと。福井県など一部の地域では、「返す」が破談や破棄を連想することから「お輿入れの包み」「婚礼の包み」と呼ぶこともあります。また、新郎側から贈られる結納品のお返しにお嫁に参りますという文言をしたためた「進参状」を携えて、新婦側の家族が新郎家に挨拶にいく風習が残っている地域もあるようです。仙台市ではこの風習が江戸時代から残っていて、進参状は印刷された手紙が宮城県内のデパートで取り扱いがあるほどオーソドックスなもの。初めての結婚でも、家族が四苦八苦して文章を考える必要もないそうです。 新婦が新郎家に初めて訪れるときは門に家紋の入った幕を張って出迎え、ご近所さんなど集まった地域の方々へまんじゅうを屋根から投げて振る舞うなどといったその土地ならではの出迎え方があります。これから嫁ぐ予定の女性は、嫁ぎ先の風習をしっかり勉強しておく必要があるかと思います。 ほかにも玄関で一升マスのなかから土器の器で水を飲んだり、玄関から上がる際は草履を逆に返さない、などといった風習も一部地域で残っています。玄関で水を飲むのは「一生水の儀」といって、一升と一生をかけたおまじないで家の水があうようにという意味が込められています。また飲んだ土器は土間で投げ割って縁起を担ぐようです。そのご草履を脱いで上がるのですが、このときは「出ていかない」という決意を示すように鼻緒の向きを直すことなく家に入ります。 昔ながらの伝統で、「意味が分からない」「今では流行らない」などいろいろなご意見もあることでしょうが、それだけ昔の人は結婚というものがどれだけ大事で大切なものと考えていたかがわかります。そんな慣習を残している地域に嫁いだことをありがたく感じることができれば、この先嫁ぎ先との関係は良好なものになることでしょう。

披露宴は盛大に 東北地方

沖縄県の披露宴も結構盛大だと思っていますが、東北地方のそれも負けじと盛大なようです。現在は式場やホテルなどで披露宴を挙げるのがふつうになってはいますが、昔は新郎家で行われていました。また新郎家のお付き合いを大事にしていたことで、参列者も広く呼ばれて大人数での披露宴が当たり前だったそうです。その名残からか、お二人が地味に近しい人だけで質素に行いたいと思っていても、新郎家の両親からの提案で列席者が予想外に増えてしまったという婚礼が結構多くあるようです。新婦側もそとの地域から参列される場合は新郎家の招待客数もともに話し合っておくことが大切です。最近では会費制の披露宴を行うこともあるようなので、おふたりでしっかりとプランの相談をしておきましょう。 引出物にも地域性があるようで、とくに山形県や秋田県は寝具が引出物となる風習が根強く残っています。披露宴後に持ち帰るのはかさばりますので、事前に自宅配送されていて当日はコンパクトに礼状のみという配慮もあるそうです。秋田県の横手市周辺では、披露宴の料理を折詰にして持ち帰ってもらう風習も残っていますので気を付けてください。 宮城県の結婚式定番曲は「宮城長持唄」という民謡で、長持ち、提灯、新郎新婦の順に入場する演出が一般的。長持ちとは長方形の箱に竿を通してふたりで担ぐ、衣服や調度品を入れて運ぶ運搬用の箱のことです。新郎家へ向かう新婦を表しているものと思いますが、それを運ぶ人足が唄っていた唄が参勤交代の時代から受け継がれて今に至ると考えると、その唄声にも聞き入ってしまいます。

有名な「会費制披露宴」 北海道

北海道の披露宴では「会費制」が有名ですが、そのシステムは屯田兵によって拓かれた北海道ならではのスタイルと言えます。
明治時代に施行された屯田兵の制度により、全国から北海道へ移住が始まりました。厳しい気候に荒地から農地や町をつくるというつらい開拓作業のなかでは、披露宴などお金のかかることはなかなかできません。
そんな中生まれたのが数人の発起人が呼びかけ参列者は会費を払うことで、結婚する二人をみんなでお祝いをしたことが会費制披露宴の始まりと言われています。
どれだけつらい境遇にいたとしても、人としての幸せは仲間とともに祝うという精神のもと生まれたこのシステムは、現在も脈々と受け継がれています。 その会費ですが、披露宴に参列する際に受付で係りのかたへ渡します。その際は金額の確認もあるので、お祝儀袋などには入れずそのまま財布から出して支払います。あくまでも「会費」ですので「お祝儀」は別に準備しておふたりへお渡しするようにしましょう。ただ1万円の会費が平均的な金額であるので、渡される引出物の相場も1500円程度で準備されています。お祝儀との兼ね合いは取れませんので、会費制披露宴のシステムを理解したうえでお祝儀を準備しましょう。また披露宴会場の席次も、発起人が末席となるので両家ご両親がひな壇まえの上座に廃される場合もありますので注意してください。時には末席の発起人のそばが親族席となっている場合もあります。 発起人の仕事やすけージュールをまとめてみました。

発起人としての適任者

宴の運営を行う上で中心となる発起人には、新郎新婦と式場側、そしてご両家をつなぐ大切なパイプ役です。新郎の友人や会社の同僚、共通の友人などに任せることが一般的です。

発起人として重要なこと

当日はほとんど動くことのできない新郎新婦とご両親の代わりに、さまざまな仕事を担当してスムーズな進行をたすけて園が無事に終えられることを任される立場となります。おふたりから披露宴のスタイルや予算など、細かいことまでしっかりと伝えておきましょう。

発起人会

披露宴の6か月から3か月前から発起人が集まり、どのような準備が必要なのか、どういったハプニング起こりどのように対処するべきかを事前に決めておきます。発起人会にはご両家両親も参加する必要がありますが、労う目的で集まりとは別に食事化を開くこともいいようです。基本発起人会の飲食代もおふたりの負担となりますので、回数が多すぎないよう内容の濃い打合せを重ねることが重要です。

披露宴までの仕事

案内状の作成と発送、返答確認とお二人のプロフィール制作から始まります。当日必要となる係りは司会者・受付係・案内係・配車係・写真映像係・音響効果係がありますが、それぞれ親族や知人に担当してもらえるよう人選をして依頼することになります。しかしそれぞれの持ち場でトラブルの対処は発起人の対応となるので、お釣りの準備や人数増減に対する料理の対応など式場側とおふたりとの事前打ち合わせをしっかりとしておくようにしましょう。会費の集計と式場への入金や2次会会場の準備まで発起人の仕事となります。

式当日の仕事

30分前には到着して媒酌人とご両家へ挨拶することから始まります。会場の席札や引き出物などの最終チェックから祝電の仕分けを済ませ、受付業務終了後は演出予定者への内容チェックまで行わなければなりません。また終宴後列席者のお見送りから2次会会場への案内や誘導、2次会の集計と支払にお礼状の確認。じつに忙しい仕事を任されることとなるので、親しいからという理由だけで発起人を受けてしまうと大変なことになりかねません。しっかりとリサーチしたうえで、お二人のサポートすることをふまえながら十分な事前準備を整えて披露宴を迎えられるようにしましょう。

事前準備の注意点

案内状やプロフィールを載せたしおりなどを作成する場合は、おふたりと予算も含めた打合せをしっかり行いましょう。気持ちが逸ってしまって予算オーバーしてしまっては元も子もありません。また会費のお釣り用に準備する千円札は、新札を準備して途中で足りなくならないよう十分な数を準備しておきましょう。欠席予定者が急に参列してきたり逆に欠席者が出てしまったりしたときは、式場側にどこまで対応ができるのかも事前に聞き取りして打合せをしておきましょう。

あとがき

沖縄の披露宴は会費制というわけではありませんが、お祝儀の相場が1万円と安く設定されています。引出物も同じように1000円から1300円程度が最も多く選ばれていることから、披露宴の金銭感覚は北海道と近いと感じました。また沖縄の披露宴にも「幹事」という役があり、当日の受付係と会場案内係を取りまとめる仕事があります。基本的に新郎側の兄弟や親族が担うことが通例で、当日式場スタッフとともに打合せをします。その内容は受付で集めたお祝儀の管理・余興予定者の呼び出し・出席人数に対する対応・引出物のお渡しと見送りがあります。しかし事前の仕事というのは全くなく、当日の進行が滞りなく進むようお二人の代わりに決定権を持つという意味合いがあります。ですから料理の増減や引き出物の数のチェック、お祝儀の預かりなどはあくまでも代理ですので最終意向はお二人にあります。ときどき幹事の方が決定できないときは、ひな壇に座るおふたりへ確認に走ることもありました。 沖縄の披露宴も特徴的ですが、結納も結構特徴があります。旧暦カレンダーを見て六曜を基準に潮の干満や吉凶の方向などさまざまな要因をかいくぐって行われる沖縄式結納は、またの機会に紹介させていただきます。 日本全国それぞれ特有のしきたりがあり、また地域性が反映されているその土地ならではの披露宴が催されていることがわかりました。沖縄という離れた土地から見る各地の披露宴は、これはまた新鮮な気持ちで見ることができそうで楽しみです。

この記事を書いた人

著者 : ドルフィンポポ

沖縄の結婚式場にブライダルアドバイザーとして数百組を担当。4年務めた経験から友人・知人の披露宴の幹事を担当することも。現在はWebライターとして沖縄を拠点に仕事をしています。


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